あなたが好きなのは「音楽」ではない

マツミヤカズトのGEEKコラム

令和ましておめでとうございます。

GEEK! GEEK! GEEK! は、いつもお世話になっている徳島グラインドハウス店長・長谷川さん主催のサーキットイベント「若者たち」でバキバキの演奏をして、平成を納めてきました。

長谷川さん、本当に楽しい1日をありがとうございました。

こんな感じでゴリっとキメて参りました。

まぁ・・・わし写っとらんけども・・・
(スピーカーの裏側にいます)

実は本当は「若者たち」のイベントよりも前に、「若者」にからめて何かコラムを書こうと思っていたんですが、何も思いつきませんでした。
そして今も思いついていません。えへ。

ところで先日、何かを思いついたような気がして、こんなツイートをしまして

ごくたまにしか呟かないのに意外と「いいね」をいただいてしまって「おお、しまった。書かなあかんやんけ」と思ってこのコラムを書き始めています。

ただし、あの時何が「わかった」のかが、今はよくわからなくなっています。

きた!と思ったんやけどなぁ・・・なんやったかいのう・・・。

変な着地点になるかものう・・・まぁ、ええでないかだ(阿波弁)ってことで書いてみます。

タイトルは嘘です

今回のタイトルは『あなたが好きなのは「音楽」ではない』となっておりますが、まぁこれはぶっちゃけ、このコラムを読んでもらうための、わざと誤解を招くようなフックです。小技です。小手先です。めんごめんご。

または、「その程度の知識で「音楽が好き」なんて言ってもらっちゃ困るなぁ~」っていう話でもありません笑

正確に言い直しますと

・あなたが本当に好きなのは「音楽」という概念そのものではなく、「音楽文化に付随するいろいろ」なのかもしれない。(別に誰のことも責めていませんよ)

・本当はもっと細分化された「行為」が好きなはずなのに、それをざっくりと「〇〇が好き」と言っちゃうのは誤解と迷いが生じる場合があるよ。

・「好きだ」と思うことを、大きな概念ではなく、より細分化して捉えることができれば、自分がやりたいこと、やるべきことがもっとクリアに見えてくるのではないだろうか。

以上で言いたいことは大体終わりなんですが、よくわからないと思うので、説明していきます。

そして、上記のツイートの話とどう繋がるのかは(たぶん)終わりの方で。

〇〇が好き? どんな風に?

グラインドハウス長谷川さんとちくげの対談の中で、こんな話がありました。

━━━例えばですが、まだ若くて大勢の中に埋もれているようなバンドに対して、その中から突出させるために、長谷川さんがアドバイスするとしたらどんなことを言うんでしょうか。

長谷川 そうですねぇ・・・。
いつも思ってることなんですが、そもそも3人とか4人メンバーがいたとして、それぞれに好きなことがあって、やりたいことやりたくないことがあるわけじゃないですか。
で、「やりたいこと」と「やりたくないこと」の間の微妙なバランスが、各自にあると思うんですよ。
それを全員が、うまいこと合わせることができたら・・・、その絶妙な「バランス」が他のバンドと全く同じになるなんて奇跡は無いはずなんですよ。
だから、そこをもっと突き詰めたら?とは思ってますよね。

「若者たち」へ 〜 club GRINDHOUSE店長・長谷川さんと、徳島と音楽と若者の話 〜 (2/3)
2019年4月28日(日)に迫った徳島のサーキットイベント「若者たち」。 今回の対談では主催のclub GRINDHOUSE店長・長谷川洋星さんに、なぜ「若者たち」を立ち上げたのか、そしてそれにかける思いを深く聞いてきました。 「徳島」...
僕としてはこの話はものすごく納得感がありました。

千差万別、十人十色の「好き」とか「嫌い」を3人、4人で組み合わせていけば、絶対に他のグループとは異なる要素構成の、そのグループ独自の「価値観」が生まれて来ると思います。

【レスポールのギャンギャンのサウンドでリフが弾きたい】人と
【ハイトーンボイスで叫ぶように歌いたい】人が組めば
例えばB’zのようなサウンドになるかもしれません。

しかしそこに【ディスコ調の四つ打ちビートが好き】な人がいたら、ひょっとしたらこうなるかもしれません。

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な、懐かしい・・・!!

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長谷川さんの言う「好き嫌いを組み合わせる」を行うのは、バンドに限らずなんらかのチームが「独自性」を持つためのファーストステップとして有効だろうと思います。

何が「好き」で何が「嫌い」かは、矯正されることのできない、その人個人の根源的な価値観であろうかと思います。
(それを態度や言葉に表出するか否かは別問題です)

そしてそのためには各人が、自分が「何が好きで何が嫌いか」を細分化して自覚する必要がありますし、それが「音楽が好き」とか「映画が好き」とかそういうレベルの話でないことはもうお分かりかと思います。

例えば自己紹介で「僕は音楽が好きです」とか「映画が好きです」「スポーツが好きです」と言ってしまえる人は、結構います。
いや、別に全然いいんですが、それを聞いた人は「そうですか」と思うしかないのではないでしょうか。

まぁひょっとしたら、アフリカ民謡からバッハからヘヴィメタルから秋葉原の地下アイドルの楽曲まで、あまねくすべての「音楽」が本当に好きなんだ!という人もいるかもしれませんが・・・まぁいいや・・・・いねーよそんなやつ!!!

一方で、もし誰かが自己紹介で「僕は電車に乗って景色を眺めながらイヤホンでブルーハーツを聴くのが好きです」と言ってくれたら、彼がどんな風に音楽が好きなのかがもう少し高い解像度で認識できます。
なぜそうするのが好きなんだろう?と考えることができます。

あるいは「ギターが好きです」と一言で言っても、

ライブでカッティングしてリズムを刻むのが好きなのか
それとも自宅でX JAPANの「紅」を完コピして弾くのが好きなのか
もしくは6本の弦のある楽器としてのギターを愛でるのが好きなのか

全然違ってきます。

ライブで暴れるのが好きなのか
レコーディングをじっくりやるのが好きなのか

ギターを弾きたいのか、全体としてのエンターテインメントを作りたいのか。

別にどっちを選べと言うことではなく、自分のそういう傾向や志向がわかってた方が、次の一歩が踏み出しやすいんじゃないのかなって話です。


ちなみにこれ、就職活動や面接等でも、自覚しておくといいと思います。
僕も会社に勤めている時は、小さい会社だったもんで、人を面接する立場にありました。

面接官はできるだけ具体的にあなたの人物像を知りたがっています。そして当たり前ですが「人物像」がよくわかった人の方が採用されます。
逆に一番採用されないのは「変なやつ」ではなく「よくわからないやつ」です。

「趣味は読書です」ではなく例えば「本屋で、次にどんな本を読もうかと延々歩き回っている時が一番幸せです。3時間くらい余裕です」とか

「映画が好きです」ではなく「ヘッドフォンを爆音にして部屋を真っ暗にしてホラー映画を一日中見続けるのがたまらなく好きです」とか

ちゃんと「何をどんな風に好きなのか」を自覚して、自分自身の言葉で話すと、伝わり方が全然違います。

それは別に君がやらなくていいんじゃないの

ちょっと話が変わりますが、「好き」がズレてしまうことはよくあります。

例えば、インディーズバンドのライブでは、どこかのバンドのボーカルがMCでめちゃくちゃしっとりとアツイことを言い出して、対バンならびに対バンの客が「出た出た」みたいな顔をしている、平たくいうと大変失礼ながら「スベっている」ことってよくありますね。

大体こんな感じ。

最近・・・(はぁはぁ)・・・すげぇ思うことがあってぇ・・・(はぁはぁ)・・・なんかほんと俺たちって支えられて生きてるんだなって・・・(はぁはぁ)・・・・こんな風にお前ら(客)と一緒に・・・(はぁはぁ)・・・音楽を共有できるのは本当に奇跡だなって・・・(はぁはぁ)・・・最高のメンバーに囲まれて・・・(はぁはぁ)・・・

ね?

もしくは異常なほど客をステージ前に詰めさせようとしたり、手を挙げさせようとしたり、やたらと煽ったり。
あ!おいギター!MCの後ろでええ感じのコードポロロンすな!!

ね?わかるでしょ?

こういうことをやってるバンドが大体同じフォーマットではぁはぁ言いながらアツそうなこと言う状況をみんななんとなく見たことがないでしょうか。

別に特定の人の悪口を言う気はありませんし、そういうことをやる人がみんながみんなスベってるとは言いません。

あるいはワンマンライブなら、そのミュージシャンのそれまでの道程や人となりを知ってて、その人物の「言葉」を聞きたい人がそもそも集まってるわけですから成立するし盛り上がるでしょう。
でもどこの誰かも知らないお客さんからしたらそれこそ「出た出た」となってしまいがちです。

これを我々の界隈では「説法MC」と呼んでいます。

でもたまに、こういうアツいMCがマジで上手い人もいます。僕みたいな冷めた奴もちょっとグッとくるくらいの熱量と技術で、知らない人まで感化して実際にライブを盛り上げてしまう人もいるんです。

なんとなくですが、そういうことができるのは、個人の言葉で勝負する弾き語りの人や、ライムを組み立てて言葉を武器にするいわゆるラップ(MC)系のボーカリストに多い気がします。

一度共演させていただいたmemento森さんには度肝を抜かれました。

memento森 「eS」 (Live in MINAMI WHEEL 2017 @club vijon 10/07/`17)

何が違うんだろう、と考えてました。
なんで前者は冷めた目でみられて、後者はなんか刺さるんだろう、と。
(前者が好きな人、ごめんなさいね。僕個人の感想です)

そして思い当たったのが、彼らの「『好き』の違い」「モチベーションの違い」が伝わってきてしまうんだろうな、ということです。

前者はおそらく、どこかのライブで、どこかのバンドがそう言うアツイことを言って観客が喜んでいるのを見たことがあるのでしょう。
たぶんそういうMCが上手な人だったか、すでに観客に認知された人だったんでしょう。
そしてそれが「いい」と思って、自分もやってみたいとおもったのでしょう。

気持ちはわかる。わかるぞぉ。

しかしその、スベってしまったボーカルの彼が本当に「好き」なのは「言葉で気持ちを伝えること」や「言葉で客を盛り上げること」ではなく
「なんかアツイことを言う感じのエモいバンド像」なのではないかと思います。

よく考えずにその「様式」を単純に取り入れてしまったということ。「二次創作」みたいなものです。

「ショートコント『エモいバンド』」ってライブの最初に言えば超面白いのに。

いいから早く曲をやれ、と思うわけです。
もし「言葉で気持ちを伝えること」「言葉で客を盛り上げること」が好きで、それをやりたいなら「出た出た」と思われないように、そのMCも磨き上げて、自分自身の言葉を真摯に語れよ、と。
もしくはそれを曲でやんなさいよ、と。

一方で後者、弾き語りやラップ(MC)系のボーカリストの言葉がずんずん刺さって来ることが多いのは、彼らが「言葉で表現すること」そのものが好きで、それを武器にしているからだと思います。

どこからそんなに言葉が湧いて来るんだと思うほどの語彙力とリズム感で、冷めていた観客をじわじわ煽ったり、あるいはしっとりした空気にしたりできるのはその演者のモチベーションとテクニックのおかげだと思います。

人間の感覚というのはとても鋭いもので、「本気の人」というのがわかるものだと思います。
小手先でよそから取り入れた「アツイ感じのMC」を形だけでいくらやってもお客さんはしらけてしまうのだと思います。

「名詞」ではなく「動詞」を

前述の、MCがスベってしまうミュージシャンもMCで盛り上げるミュージシャンも、どちらも大きな意味では同じ「音楽が好き」なのかもしれません。

しかしその中で「エモい感じのバンドという様式」が好きな人と「音楽に乗せた言葉を使って人に何かを伝える」のが好きという人では、その伝わり方に圧倒的な差が出て来るんだろうと思います。

最近ツイッターでこんなツイートが流れてきて、なるほどなぁと感心しました。

たしかに「音楽」も「バンド」も「エモい感じのバンドという様式」というのは名詞です。

一方で「音楽に乗せた言葉を使って人に何かを伝える」や、例えば「変態的なギターリフをかき鳴らす」や「誰も聞いたことのないような曲を作曲する」というのは「動詞」ですね。

なるほど。
あるいはこんなのも。

あんなに「音楽」が好きだったあいつ

さて、冒頭の話にもどります。このツイートで「なんとなく答えが出た気がした」件です。

もしあなたがミュージシャンなら、この手のことを熱く語っていたくせにいつの間にかいなくなった「あいつ」が一人や二人、思い当たるのではないかと思います。

「音楽で世界を変えるんだ」とか「バンドは運命共同体」とか「メンバーの絆」がどうのこうのとか、それこそ「夢をかなえようぜ」とか。

(大きな言葉ですね↓)

「大きな言葉」ほど伝わらない
ご無沙汰しております。 GEEK! GEEK! GEEK! の「話しかけづらい人」担当のマツミヤカズトです。 2019年に入ってから異常に忙しくさせていただいておりました。 いろんな人からこのコラムについて「読んでます!」「楽しみ...

ステージや居酒屋であんなに熱く語ってたお前が、今や週末はゴルフ三昧かよ、とかね。

すみません、別に責めてないんですよ。
なんでそういうことを言う人が、順番にどんどんやめて行っちゃうのか、そのカラクリを知りたかっただけなんです。

じゃあ、なぜ彼がサラッと、彼のいう「音楽」や「バンド」からドロップアウトしてしまったのか。

それは、彼が好きだったのは「そういうことを言ってる自分」「メンバーと夢を語り合うアツい状況」あるいは「有名になること」だったんじゃないでしょうか。

大きな意味での「音楽」は一応好きだったんでしょうし、その時は本当にそう思ってたんでしょう。「音楽しかねー」と。

でも人間というものの個性はそれを細分化した時に現れます。
人生において、彼が熱いことを言いたい時に、たまたま「音楽」という依り代があっただけなんじゃないでしょうか。
細分化して一皮むいた時に、すぐに消えちゃう要素だったわけです「音楽」が。

「そういうことを言ってる自分」や「メンバーと夢を語り合うアツい状況」あるいは「有名になること」は、別に「音楽」の世界でなくても実現可能です。
ていうか音楽の世界じゃない方が、それは実現しやすいでしょう。

そうなった時に別の世界で「こっちでいけるかも」「音楽じゃ無理かも」「バンドとかめんどくせぇ」と思った彼は、サクッとそっちに行ってしまったんだろうと思うのです。

「昔おれ音楽やってたんだけどさ~」とか言いながら。てか、「音楽しかねー」わけないじゃない。

そして彼はある日、ひさしぶりに会ったあなたにこう言います。

 まだやってんの? ずっと続けてるの尊敬するわ~

彼の「細分化された『好き』」の中には「音楽」は含まれていませんから、自分が既に音楽に関わっていないことになんの違和感もありません。「音楽」が彼をアツくさせていたのは、たまたま、あの時だけ、遠い過去なんです。
彼にとって、とっくに通り過ぎてしまった音楽やバンドの世界に残り続けている僕らはそりゃもちろん「まだやってんの」でしょうね。

逆にいうと、僕の知る限り、音楽でもなんでも、じっくり長く一つのことに取り組み続けられる人は、その手の「アツい」ことをあまり言わないような気がします。(まぁ、言う人もいるような気がします笑)

たぶん、言う必要がないんだろうと思います。「好き」をどこまで細分化していっても、当然のように、その文章の中に「音楽」が含まれてしまう人にとっては「音楽しかねー」ことなんて当たり前すぎて、わざわざ口に出すことでもないのでしょう。
あるいは「好きなこと」の中に「アツいことを言う」が入っていないか。

そういう人が、深酒をした時にぽろっとそういうアツいことを言ってしまうのを見るのが、僕はすごく好きなんですが。

「あいつ」のことを許してあげて

今回はなんだか、謎の仮想敵を作って攻撃するような文になってしまいました(笑)
が、言い訳になりますが、その(実在するかもわからない)「あいつ」を責めるつもりはありません。

軽い気持ちでそんなアツいこと語ってんじゃねぇ、なんて言う気もありません。
音楽だろうが映画だろうがスポーツだろうが文学だろうが、あらゆる文化の門戸はその志の高低に関わらず広く開かれているべきです。

カープ女子でも山ガールでも誰もがその文化に触れて、平等に楽しむ権利があります。

今回僕がわかった気がしたのは、去っていったあいつを責めるロジックではなく、あいつにはあいつなりのロジックがあったんだろうな、ということです。
彼は当時は本気でそう思ってたし、彼なりの論理と正当性があったから、サクッと去ったんじゃないか、と。

今、僕たちにはたくさんの音楽仲間がいますが、やめていった奴らもたくさん見てきました。
「やめるな」などと言うつもりはありません。
しかし、もしやめて、違う世界で頑張っていこうと思うのならば、自分が音楽の世界において「何が好きだったのか」を考えてみてほしいなと思っています。

音楽でも、仕事でもなんでもいいですが、「自分の好きなこと」の一体どこが好きなのか、どういう行為をしている時が一番幸せなのかを一度よく考えてみると、新しい世界で自分が何を選び取って行けばいいのか、そのヒントが必ずあると思います。

いやー偉そうなこと言っちった。めんごめんご。

ってか別に、バンドが一個ダメになったくらいで音楽までやめることないじゃんねぇ?
好きなことを好きな頻度で好きにやりゃいいじゃんねぇ。

別にMCでスベったっていいけど、それよりは自分が好きなことを細分化して探してから音楽に取り組んだ方が楽しいかもよって言ってます。

「お前らは本気で音楽に向き合ってない」とでも、偉そうな先輩に言われたかい?

ほっとけ。

その偉そうな先輩が好きなのも「そういうアツいことを言ってる自分」でしかないのよ。

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