トリゴロ森脇さんと(脱線しまくりの)深い話 (3/4)

ちくげを解剖する
ちくげがいろんな人に会ってお話する
「ちくげを解剖する」シリーズ第二弾!
2018年12月某日。
GEEK! GEEK! GEEK! がいつもお世話になっているスタジオトリゴロ にて、オーナー兼レコーディングエンジニアの森脇大佑さんにお話を伺いました。
普段は実務的なお話ばかりなので、改めて話してみると知らなかった意外なストーリーが次々と飛び出してきます。少年時代の森脇さんやスタジオトリゴロの創業秘話、チャットモンチーとの関わりなど、面白すぎて異常に長い対談となりました。
全4回でお送りします!

※進行、編集:マツミヤカズト

 

第3回

レコーディングエンジニアの仕事

──昔の、一発録りの時代のミュージシャンってすごいなって思います。

ちくげ 編集できないわけですもんね。

森脇 そうそう、一発勝負。うちでやり出した当時も、何回も録り直しできんわけよ。テープがどんどん削られて音が悪くなっていくから。

ちくげ そうですよね。

森脇 だから録る時はほんま、キマった時と言うか、高まった時。
そういう「タイミングを見る作業」でもあったわけよ。

ずっとリハをしてるわけで、その中で「一回合わせてみるか」っつって、ちょっと気が抜けてるけど力が入った演奏ができたりして、それがオッケーテイクになったりして。
だからおれ、けっこう回すだろ?「練習」って言いながら実は録ってたり。

ちくげ それが実は一番いいテイクだったりするんですね。

森脇 そうなんよ。結構そういう「練習テイク」を残してたりするんよな。リハ扱いがベストテイクっていう。

ちくげ ありますよね。いや、実は僕ね、今の仕事してなかったらエンジニアやりたいかもっていうくらい興味があって。

森脇 いや〜、ちくちゃんはエンジニア向きではないと思うな。

ちくげ まじすか!

森脇 ディレクターとか、プロデューサーの方がいいんちゃう?

ちくげ あ〜〜。

──ちくげさんも昔はバンドで、自力でMTRでレコーディングしてたんよね?

ちくげ してた!YAMAHAの・・・

森脇 DMシリーズ?

ちくげ ですかね?めっちゃ大変でした。一応16chあったんですけど・・・編集もめっちゃむずいし。

森脇 そうなんよ!ポータブル機ってビジュアルで(波形が)見えん分、すっごい難しいんよな。

ちくげ 耳勝負ですよね。

森脇 そうそう、聴きながら。面白いけどなぁ、昔の触ってみると。テープのMTRとか引っ張り出してな(笑)最近もやったなぁ。それはそれですごい良かったりする。

※後から調べてみたところ、こちらの機種だったようです。

YAMAHA AW4416

 

ちくげ ははは(笑)まぁ、そんなこともやってましたけどね。

森脇 うんうん。でも最近はもうエンジニア「だけ」っていうのが・・・成り立たんのよな。やっぱりプロデュースとマニピュレーターとエンジニアと、全部がセットにならんとしんどいんちゃうかなぁ。

ちくげ そうかぁ。

森脇 結構、さっきも言うてたように、機械が発達してきたからな。案外誰がやっても良い音で録れるわけよ・・・!ある一定のところまでは!!あとは・・・

ちくげ 経験則とか・・・

森脇 そう。その場の、録っていく流れの仕切りだったりとか、メンタル面の持ち上げとか、そっちの方が重要だったりするよな。

ちくげ レコーディング現場って結構、「判断」を的確にしていかないと

森脇 そうそう。

ちくげ 時間もお金も無駄になってしまいますもんね。

森脇 その辺はGEEK! GEEK! GEEK! は、経験値があるから、勝負が早いよな!(笑)

ちくげ というかまぁ、「早くなるような音作り」をしてますね(笑)

森脇 うん(笑)でもやっぱり高校生とか学生さんが初めてレコーディングする時って、わからんことが多いし、どうやったらいいんだろうっていう感じだろうしな。

ちくげ どこまで編集できるんだろうっていうのがわからないですよね。

森脇 わからんよね。「編集ありき」の感覚っていうのは。とりあえず、何持って行こうかな?から始まってるんだろうしな。

エンジニアとしてのアイデンティティ

──森脇さんは、どれくらいの「自我/アイデンティティ」で仕事してますか?っていうのは実は気になってまして。
もちろん相手によるとは思うんですが「こうしたらいいのになぁ・・!」と思いながらも黙ってたりしますか?

森脇 ああ〜〜〜!!それはまぁバンドによるよなぁ。
それ言うことで良くなる場合もあれば、言ってしまったら関係がギクシャクしてしまう場合もあるし。現場の判断やなぁ。

ちくげ うんうん。

森脇 まぁ、音の録り方ひとつでも、いいテイクの録音の仕方はいろいろあって。
例えばサビのアタマから録りたいっていう場合に、Bメロのアタマから出すのか、サビの2小節前からいくのか、それともクリックだけ出してサビのアタマからいくのかっていうのは、エンジニアの判断になるんよな。
それをパッとできんとあかんわけで、それをあえて「どうしますか?」って聞かずにやってるのが、その「自我」かもしれんなぁ。
自分がバンドしてたら、このへんから出してくれたら気持ちが乗ってサビにいけるなぁとか。パッと思いつきでやるっていう。

ちくげ はい。

森脇 それが小さな反抗なんかもしれん。

ちくげ 反抗(笑)

森脇 「自我」が出るとこやな。どういう感じでレコーディングしていくのがいいのかっていう瞬時の判断が。

ちくげ もう、どう考えてもアレンジミスっていう場合はどうですか?

森脇 それはもう!アーティスト側の問題であって(笑)
それを言い出したらもう、レコーディングが進まんくなってしまうわけで(笑)

ちくげ あ、わかった!僕はそれが気になってしまうから、エンジニアには向かないんですね?

森脇 大変よ!エンジニアはエンジニアに任せた方がやりやすいよな〜!

ちくげ 僕ちょっと、それは耐えられそうにない(笑)

森脇 そう。それだったらもうプロデューサーをやって、エンジニアはエンジニアを置いとく、と。 事前にプロデュースの段階でアレンジも詰めて、煮詰まった状態でレコーディングに入った方が時間も労力も短縮できるだろうし。

 

──例えばすごい大事なギターソロで、絶対スケール上、絶対鳴らしたらあかん半音ズレたようなフレーズを「これでいきます!」と来た場合どうしますか?

森脇 あ、そりゃ言うよ!言うけど、あえて狙って不協和音にしてる人もおるわけで。

ちくげ いや、そこがね!(笑)「絶対あかんやん」っていう場合がないですか。

森脇 もちろん聞くよ。「これ音当たってません?」とか「アリですかねぇ?」とか。
それくらいは言うわ!(笑)あとまぁ、チューニングズレとるとかな。

ちくげ はい。

森脇 結構、あえて外した音みたいなんって録ってみんとわからんかったりするんよ。逆に問題ないと思っても重ねた時に倍音とぶつかって気持ち悪いとか。
それはもう現場で判断していくしかないよな。

ちくげ うーん。やっぱり僕は我慢できんかも(笑)

一同(笑)

森脇 ほなけん、やっぱり先に詰めとかなあかんよな(笑)

ちくげ そういう意味ではこのGEEK! GEEK! GEEK!はすっごいやりやすくて。

森脇 もう、三人しかおらんもんな!

ちくげ 最初から作り込めますから。

森脇 ようできとると思うよ。

ちくげ ありがとうございます。

森脇 音の数も多いし。・・・困らせやがって!

一同(笑)

 

ちくげ でも僕は音をね、特にリズムトラックなんかは「盛りがち」なんですけど、「これいらんのちゃうん?」とかは、全然言って欲しくて。

森脇 あぁ〜。

ちくげ あってもなくても、みたいな音も結構入れてたりするので。

森脇 それは・・・たぶんミックスですごい薄くしとると思う(笑)

ちくげ そう!ミックスの段階で「あ、消えてる」っていうの、ありますね(笑)

森脇 やっぱり、口で言うより作ってしまった方がわかるでえ。

ちくげ はい。

森脇 「百聞は一聴に如かず」ってな(笑)

一同(笑)

──うまい表現ですね(笑)

森脇さんから見た「GEEK! GEEK! GEEK!」

ちくげ 今まさに、2ndミニアルバムの発表に向けて、お世話になってますけども

森脇 はい。やらしてもうてます。

ちくげ 今4曲まで上がってきてて、あともう1曲か2曲足して、5曲もしくは6曲くらいかなとおもってるんですけども・・・、もう1曲、どんな曲を聴いてみたいとかはありますかね?

森脇 うーん。なんか、明るい曲。もう、すこぶる明るい曲を聴いてみたいかな。

ちくげ あ〜〜、すこぶる明るい曲。
bandneonだったら書けたんですけどね。例えば「主題歌」とか。あれはもう、突き抜けて明るい曲を書こうと思って書きましたね。
ただ、このGEEK! GEEK! GEEK!だと「明るい」っていうのがどうなるか・・・

森脇 まぁでも、自分のやりたいことをやるのが一番いいと思うよ。

ちくげ 無理しない範囲で(笑)

森脇 うん。「明るい曲」というオーダーがあったとしたらどんなんが出てくるんかな?っていう興味でそう言いましたが。

ちくげ はい。

森脇 変態やしなぁ。

一同(笑)

ちくげ 僕の中でも、つくりながら、どんなんができあがるかわからないんですよね。

森脇 うーん。どんなんが聴いてみたいかなぁ。例えば思いっきりディスコで、4つ打ちで・・・

ちくげ 4つ打ちは結構得意です!

森脇 あ、「踊れる」イメージは?

ちくげ 踊れる感じ、なるほど!

森脇 いやぁでも、アーティストって、すごいよな。ないものをゼロから作っていくわけで、すごい大変で。

ちくげ 大変ですよね。

森脇 なんでもそうやけど、新しいものの創造ってすごいことで。
レコーディングっていうのはそれに携われるっていうか、白紙の状態からできてくるから楽しいんよな。

ちくげ はい。

森脇 アーティストって、誰かのリクエストにばっかり応えてたらいいっていうわけじゃないし。それはその「誰かさんのリクエスト」であって、それにとらわれてたら、いいものなんてできんかもしれんし。
自分が創造したものを世に出してこそ、リスナーからの支持が得られるわけで。

ちくげ 〇〇みたいっていうのばっかりじゃあかんし。

森脇 すさまじい仕事やなぁと思うわ。すごいわ。ほんまに。
それで飯くっていくわけで。ずっと考え続けて。

ちくげの「個性」

──前回のトムさんとの対談でも「オーダーを受けて曲をつくる」っていうことの話があったんですが、例えばちくげが楽曲提供した「POLU」のレコーディングをする時に「この曲はちくげっぽいな」と思ったりすることはありましたか?

https://geek3.jp/?p=347

森脇 あ〜、「ちくげっぽい」とまでは気づかんかったけど「ようできた曲やな」と思ったよな。

ちくげ ありがとうございます!

森脇 ちゃんとボーカルの音域とかを考えて作ってるな、っていうのは感じたなぁ。あぁ、歌いやすそうやなあ、っていう。『Sing』やったっけ?

ちくげ はい。あれはキー合わせましたね。

森脇 結構ボーカルの音域を無視してメロディ作る子もたまにおるんやけど、それはすごいもったいないなぁ、と思う。せっかくいい帯域があるのに、あえて歌えんところでつくってもしんどいだけで。なかなか録音もできんし。

 

──ちくげは今、自身でボーカルをする中で結構ファルセットを使ってますが、それはファルセットの帯域の良さを狙ってたりする?

ちくげ いや、そこは・・・そうでもない・・!(笑)

森脇 単純に出んってこと?

ちくげ ん〜、というか結構メロディを重視してるので、ファルセットになってしまってもそのメロディを歌いたいっていう事ですね。
ただ一応、辻褄があうようにはしてて。自然に聞こえるようなメロディにしてますね。ここでファルセットが出て来ても大丈夫やなっていう。

森脇 ファルセットはなぁ、なかなか難しいよな。

ちくげ 難しいですね。

森脇 まぁ言うたら音のレンジが結構上がるわけで、ちゃんと使えたらすごい武器になるよな。かすれてしまったりすると、逆に聞き苦しくなったりするけど、ちゃんとその帯域を出せるのであればすごい武器になるよな。

 

──僕は、ちくげはいいファルセット出してると思いますがどうですか?

森脇 出してるなぁ!

ちくげ まじすか! いや、僕はファルセットがウィークポイントかなと思ってたんですが・・・。

森脇 そんなに多用はしてないよな?でも元の声が高いけん、すごいなぁと思う。

ちくげ ハイCまで出ます。

森脇 すごい!!

ちくげ 低いのが逆に出ないのでレコーディングで分けて歌ったりさせてもらってますよね。

森脇 高いの、いいよなぁ。なんせ声がいいよなぁ。

ちくげ ありがとうございます!

森脇 ずるいよなぁ。

ちくげ いやぁ僕、自分の声嫌いで。

森脇 うそぉ。

ちくげ あんまり自分自身の声を好きって言う人はいないと思いますけどね。今までボーカルやってなかったのもそういう・・・

森脇 やった方がいいわ、ボーカル。

ちくげ ありがとうございます。

 

──ちくげの声って、特徴のある声なんでしょうか?

森脇 うーん。特徴というか、聴きやすいよな。
あっ、そうそう「徳島におらん声」!

ちくげ あはは(笑)また!

──とってつけましたね(笑)

森脇 でもおらんだろ?実際(笑)

ちくげ 弟がいますけどね。

森脇 いや、弟は結構ロック寄りでぇ。
弟は弟ですごいけど、兄弟揃ってこれだけボーカリストってすごいよな。

※弟:THE NINJAのボーカル・加賀ノ一向

 

──徳島の極悪ギャラガー兄弟

一同(笑)

森脇 そのうち大喧嘩するんだろ(笑)

ちくげ 絶対一緒にバンドやらないですね。

森脇 やったことないん?

ちくげ ないですね。

森脇 こないだの打ち上げであんなに仲良くカラオケしよったのに笑

 

──いい距離感なんですよね(笑) ちくげさん、なにか声で悩んでることとかあったりしますか?

ちくげ ファルセットの話に戻るんですが、レコーディングはまぁ、いいとして、ライブなんですよね。ライブだとどうしてもファルセットの部分は音量が落ちちゃうんですよね。

森脇 うん。落ちると思う。

ちくげ 皆どうしてるんですかね?

森脇 いや、落ちていいんちゃう?自然なもんやしな。
それを上げるのがPAの仕事でぇな(笑)

ちくげ そうか。いや〜なんかうまい人のライブ聴いてると、しっかり出とるな〜とか思ったりするんですよ。

森脇 ああ、そんなん調整調整!

一同(笑)

森脇 まぁ、強いていうならマイクとの距離を縮めるとか。でも縮めると低音成分が出過ぎてしまうけん、ファルセットにしよる意味がなくなってしまうよな。

ちくげ なるほど。

森脇 だから、声量とかよりも、音の響きとか艶やかさを意識した方がいいんちゃうかな。
音量とかはもう、こちらの領分なんで(笑)

 

次回は最終回。森脇さんと関わりの深いチャットモンチーのお話や、これからのコンテンツ戦略について語り合います。(見せられるとこだけ!)


森脇大佑さん

スタジオトリゴロのオーナー兼レコーディングエンジニア。

チャットモンチーのみならず錚々たるミュージシャンのレコーディングに携わるなど、長年徳島のミュージックシーンを支えてきた。

GEEK! GEEK! GEEK!やbandneonも長年お世話になってきた、頼れる兄貴的存在。

http://www.torigoro.com