「バンド」を解体する

マツミヤカズトのGEEKコラム

GEEK! GEEK! GEEK! 初ライブ(2018.10.13)
ありがとうございました!

一体どうやってライブをするのか謎だった我々ですが、ようやくステージでの演奏スタイルを決定することができました。(まだまだ改良していきますが)

ベースボーカル、ギターコーラス、マニピュレーター/キーボードという
「バンドのようでバンドでない何か」になった我々。

奇しくもその日共演していただいたのは徳島を代表するライブバンドであるTHE NINJAと、東京から「BAND MAGIC IS THIS」というタイトルをかかげてツアー中である、ライブバンド中のライブバンド、ザ・クレーター。

それぞれに非常にコンセプチュアルな三組が集まった、濃厚なライブとなりました。死ぬほど楽しかったです。

さてコラム第2回目は、我々自身がなぜ、こんな形態になったかについて書きたいと思います。

大仰なタイトルをつけましたが、実際に我々がGEEK! GEEK! GEEK! というプロジェクトをスタートさせるきっかけの一つに「バンドという形態である必要性への疑問」というものがありました。

簡単に言えば「なんでおれそんなにバンドにこだわってるんだろう?」ということです。

ここでいう「バンド」というのはボーカルがいて、ギターがいて、ベースがいて、ドラムがいて、時々キーボードがいるビートルズの時代以来、世界中の人々のイメージが一致するであろう、3~5人程度の生演奏グループのことです。

「ロックバンド」という表現の方がイメージするものに近いかもしれません。

とにかく、The Bandでも、Mr.Childrenでも、Red Hot Chili Peppersでも、TOKIOでもなんでもいいですが、

そういう「様式」の枠があることは、ご理解いただけるかと思います。

「バンド」という甘美な響き

2017年、アメリカにおいてついにヒップホップとR&Bの売り上げが史上初めてロックを超えたというニュースが話題になりました。

昨年の米国の音楽売上、ヒップホップやR&Bがロックを超える - シネマトゥデイ
[ロサンゼルス 4日 ロイター] - 調査会社ニールセン・ミュージックが3日発表したリポートによると、2017年の米国音楽売り上げで、R&B/ヒップホップが全体の24.5%を占め、初めて最大の音楽ジャンルとなった。

まぁこのデータは詳しく見ていくと、音楽を聴く手段(例えばCDなのか配信なのか)ごとに各ジャンルによって親和性の差がありまして、単純に「いまやヒップホップやR&Bの方がロックなんかより主流なんだぜ」という事はできません。

しかしながらビートルズやビーチ・ボーイズの時代以降半世紀以上にわたって続いてきた
「ロック/ポップスが世界のメインストリームな音楽ジャンルである時代」
が終わりつつある事は確かなようです。

僕もちくげも、日本のいわゆるバンドブームみたいなものは通過していません。

グループサウンズ世代では当然ないですし、イカ天世代でもありません笑
メロコアブームやビジュアル系ブーム、青春パンクブームなどいろいろありましたがことごとくスルーしてきました。
(ビジュアル系からは非常に遠いルックスですしw)

しかし、はっきりと「バンド」という言葉、「バンド」という様式が持つ不思議な魅力を感じながら生きてきたような気がします。

僕は中学生で初めてバンドを組みましたが「音楽やりたい」でも「演奏したい」でもなくとにかく「バンドを組みたい」一心でした。

「バンド」は手段ではなく、目的でした。

なんなんでしょうかね?バンドって。

おれがいて、あいつがいて、あいつがいて、あいつがいて
それぞれに担当する楽器があって、
自分たちの、このメンバーの組み合わせでしか出せないグルーヴ感があって(もしくはそう思い込んでて)。

友人グループとも、スポーツチームとも、チーマー(死語)とも違う気がします。(チーマーになったことはありません)

それぞれに違う楽器を持ち、違う音を出し、一人一人に確たる役割があって替えが効かない、そういう「おれたち感」とでも言いましょうか。
そういう「座組み」を作ることに歓びがあるような気がします。

「おれはあいつのドラムじゃねぇと弾けねぇ」とか言い出すベーシストとかいますよね。

僕はブラスバンドやオーケストラの経験もありますが、あそこまで人数がいると個人よりもむしろ替えが効く「楽団員」になってきます。
バンドほどの強い結束はありませんでした。

近いものは何かなぁと考えてみたのですが、特に思いつきませんでした。

ひょっとしたらF-1等でピットインした時に一斉に作業するあのチームのような感覚に近いかも?
それぞれが別々の役割を一気にこなして、たった数秒でメンテナンスやタイヤ交換をしてしまうアレです。

もしくは、全く控え選手のいない、スラムダンクのバスケチームとか。

うーん。でもやっぱ違うかな。
とにかくバンドっていうのは不思議な魅力がありますよね。

バンドはしんどい

「BECK」という漫画でもたくさんバンド内いざこざが出てきますが、バンドというものを継続するのは、本当に、面倒で、大変なものです。

一般論ですが、演奏の面で言えば、例えば誰かが調子が悪いと他のメンバーもつられてしまうリスクがあります。(もちろん、逆にいい場合もあります)

ドラムがノッてない日はバンド全体のノリも悪くなりますし、演奏技術にムラのあるメンバーがいるとライブ中でも「今日は大丈夫だろうか?」なんて気になってしまったり・・・、

ビッグバンドやオーケストラほどの人数になれば同じ音を出すメンバーもいますのでお互いに補完することもできますが、いわゆる4~5人の「バンド」は一人につき一つの演奏を担当しますので、そうもいきません。

また、人数が増えれば増えるほど、スケジュール管理だけでも大変になってきます。メンバーの誰かが「いついつライブのオファーがあるんだけど、予定どう?」と聞いてきたとします。
みんながみんなレスポンスが早ければいいですが、なかなかそうはいきません。
意思決定のスピードは人数に比例して遅くなっていきます。
練習の日時を決めるだけでも一苦労です。

オーケストラならそもそも「毎週土曜日」で、これない人がいても仕方ない、なんて割り切り方もできるかもですが、バンドでは一人も欠けるわけにはいきません。

ちくげと僕が所属していたbandneon(現在活動休止中)でも、こういう「めんどくささ」は常にありました。

誰が悪いわけでもありません。全員が20代~30代の働き盛りで仕事だけでもヒーヒーいう忙しさです。おのずと活動機会は減少していきました。

とにかく曲を作って、歌詞を書いて、ライブをして音源をつくりたいというちくげと僕の気持ちは、メンバーから見たら空回りしていたかもしれません。

有名になることすら、僕たち二人にとっては二の次でした。演奏技術と表現力の向上をメンバーに求め続けていました。

グラインドハウス店長の長谷川さんは「ギーク襲来」のライナーノーツの中で好意的に書いてくれていますが、内情はなかなか辛い状態になっていました。

『ギーク襲来』ライナーノーツ
『ギーク襲来』ライナーノーツ 2018年1月22日、悲しいニュースが耳に入ってくる。 〝bandneon活動休止〟 内部事情を知らない訳じゃないから、こういう事態が起こることを予想出来てはいたが、それでも現実として発表されてし...

もしbandneonが復活する日がきたら、どうしたらいいのか、まだその答えは見つかっていません。

「バンド」への違和感

bandneonとして数々のライブイベントに出演しました。
その中で、いつしか僕の中にはある違和感/疑問が生まれていました。

「どうして出演者のほとんどが当たり前のように、ドラムがいて、ベースがいて、ギターがいて、ボーカルがいる構成なのだろう?」

もしくは

「誰もが『バンド』というサウンドの範疇の中で、曲を、演出を作っているように見える」

ということです。

もちろん前述の通りヒップホップやR&B全盛の時代ですからそういうイベントに顔を出せば全くそんな事はないでしょう。

そもそも「バンドのイベント」に出演しているわけですから当たり前なんですが、どうしても、ドラム・ベース・ギター・キーボード・ボーカルというメンバー構成をどの出演者も取り揃えて、同じような帯域の音を出していることにどことなく違和感と不安感を抱くようになっていました。

いや、もっと正確に、かつややこしく言うと

「バンド」という単語で記号的に(しかも正確に)指し示されてしまう自分たちの音楽的広がりのなさへの疑問

ですね。

「バンドという様式」自体には何の罪もありませんし、その様式が好きな人は当然たくさんいます。僕も好きです。

しかし、僕はそこに「音楽的表現の行き詰まり」を感じてしまいました。
「バンドであること」が手段なのか、目的なのか、よくわからなくなっていたのです。

「へー、バンドやってんだ」という友人の言葉で、おそらく彼の脳内に描かれているであろう「バンド像」と実際に自分たちがやっている「バンド」の間にさほど差異がないことのもどかしさです。

「いや、実は想像してるのとはちゃうねん」と言えない凡庸さ。

「バンド」から「まだ名前の付いていない何か」へ

bandneonは、バンドであろうとし過ぎていたのかもしれません。なんせバンド名に「band」が入ってるんですから笑

僕たちは当時、一切の「ほかの楽器」を排除し、ライブで全く同じ音を鳴らせるようにこだわってレコーディングしていました。

bandneon「スクランブル」【LIVE】

それはそれで、様々な工夫を凝らして、「バンドサウンド」というフィールドの中で純度の高い作品作りができていたと思います。
しかし、あれもやりたい、こんな音楽もやりたい、という気持ちはどうやらボーカル・ギター2本・ベース・ドラムで表現出来る範疇からはみ出てしまいました。
あるいはその「再現」にこだわる姿勢が自分たちのステージングに堅苦しさを与えていたのかもしれません。

テクノロジーの進化と一般化によって、音楽の作り方、楽しみ方はこの10年程度で大きく変わりつつあります。

シンプルな例で言えば、自分のMacで作った伴奏をiPhoneに入れて、ライブハウスでイヤホンジャックにつないでもらってそれを流しながら歌うことだって十分に可能です。もちろん音源をつくる技術の上手い下手はありますが、実際にそうやってライブをしている人はたくさんいます。

もっといえば、ボーカルも入った音源をそのまま流して、自分は口パクしながらパフォーマンスに徹するアーティストもいます。
そうです。岡崎体育さんです。

あるいはベースが二人いたり、ヴァイオリンがいたり、ピアノとドラムだけだったり、様々な形態の「バンド」がいます。

時には「演奏しない人」がメンバーにいる場合もあります。
Soil & Pimp Sessionsのアジテーター「社長」や、Happy Mondaysのベズ、そして我らが盟友THE NINJAの「黒子」などです。

SOIL & PIMP SESSIONS – Tokyo Jazz 2007

彼らの存在は、音楽とは、ショウとは、エンターテインメントとは何か、を考えさせてくれます。
必死で正確に楽器を鳴らすことだけが「演奏」ではないのかもしれません。

もちろん、しょうもない演奏ミスは勘弁ですが。

さて、僕たちは、バンド、なのでしょうか?

基本的にメインボーカルはちくげが取りますが、僕やzueが合いの手のように歌うこともあります。

一応、それぞれに得意な楽器を弾きます。

ちくげはベースを、僕はギターを、zueは「変態要塞」と呼ばれる機材の山を操作します。

しかし、ちくげがピアノを、zueがベースを、僕がディジュリドゥを演奏することだって可能ですし、それにこだわっていません。

あるいは、「音」だけでなく「映像」や「ダンス」といった視覚的な表現も、我々にとって挑戦すべき芸術の範疇にあります。

とりあえず楽しいです

「何をいまさら」と言われるようなお話でしたが、頭の固い僕にとって「バンドという様式」を脱却することはなかなか大変なことでした。

今だって不安です。

しかし、バンドという枠組みを取り払ったちくげが鬼神のようなスピードで書き上げてくる曲の数に、確かな手応えを感じています。

最後に言っておきます。

バンドサウンド、大好きです。

初ライブで共演したTHE NINJAとザ・クレーターはどこからどうみても、目的ではなく、表現のための手段としてのバンドでした。

エンターテインメント、ショーとして、彼らにとってバンドという形態がもっとも適しているからこそ、彼らの見た目も、バンドサウンドも、文句なしにかっこいいのだと思い知らされました。

そして我々に適した「手段」がやっと見つかったような気がしています。

ひょっとしたら散々GEEK! GEEK! GEEK!をやり散らかした後に、「バンドサウンドの表現の手段」としての「バンド」すなわち「bandneon」を楽しめるようになるのかもしれません。

僕たちは自由です。

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