ちくげがいろんな人に会ってお話する
「ちくげを解剖する」シリーズ第二弾!
2018年12月某日。
GEEK! GEEK! GEEK! がいつもお世話になっているスタジオトリゴロ にて、オーナー兼レコーディングエンジニアの森脇大佑さんにお話を伺いました。
普段は実務的なお話ばかりなので、改めて話してみると知らなかった意外なストーリーが次々と飛び出してきます。少年時代の森脇さんやスタジオトリゴロの創業秘話、チャットモンチーとの関わりなど、面白すぎて異常に長い対談となりました。
全4回でお送りします!
※進行、編集:マツミヤカズト
チャットモンチーの時代
──チャットモンチーが使ってたことでも知られるスタジオトリゴロさんですが・・・最初にチャットモンチーがやって来た時って、なにか「すごいのが来た!」みたいなのはありました?
森脇 チャットモンチーは最初、絵莉子しかおらんかったんよ。ボーカルの橋本絵莉子な。
絵莉子がまだ高校生の時にここがちょうど、ライブハウスがなくなるかどうかくらいの時期かなぁ。
ほんでなんか「CDっつーのを出してみたい」っていうて来たのが最初の出会いかなぁ。まだ高校生で、同級生の女の子とバンドやってて。
あっこ(福岡晃子)もまだ入ってなかった時な。
ちくげ ファンだったんですよね。
森脇 そうそう。おれはまだあっこの存在も知らんくらい。
それで・・・あっこが大学入ったくらいか?絵莉子はもう、歌で生きていきたいっていうのがあって大学行かず、ずっと練習してて、ここの2階のスタジオによく来てた。
ちくげ へぇ〜。
森脇 懐かしいなぁ〜。レコーディングとかしよったよ。もうなんか、和室を改造して、布団をマイクスタンドに掛けたりして。そのころは全然機材もないし、やっすいマイクで。
いまだに残っとるんちゃうかな。チャットの超初期の音源が、テープで残っとると思う。
ちくげ 「チャットモンチーになりたい」とかですか?
森脇 いやいや、それより全然前よ。
ちくげ うわ〜、その当時にこの辺りをウロウロしてたかったですね。せっかく同世代なのに。
森脇 そうやなぁ(笑)でも確かに、チャットは同世代に恵まれとったよね。四星球がおったりとか。
ちくげ そうですね。
森脇 HAMKとかな。荒瀬くんって、亡くなってしまったけど・・・。
あとHalf-Life。ドラムの福島有もチャットのドラム手伝ったりしよったよな。
ちくげ THE 春夏秋冬も同世代ですね。
森脇 そうそう。恵まれてたよな。お互いにこう、凌ぎ合いみたいな。
すごかったもんな、あの頃は。普通に平日でもライブの動員100人とか・・・。
──すごい。チャットモンチーに限った話じゃなくて、その当時はってことですか?
森脇 うん。その時代はもう、満杯だったよな。
それこそここがライブハウスだった時も、週に3日、4日は平日でもライブがあったらフルで満杯よ。
ちくげ めっちゃバンドブームですよね。
森脇 今みたいにスマホもなかったし、ゲームもないし、やることと言ったらバンドくらい、みたいな。
ちくげ 実際音楽聴くのもCDで。
森脇 CDなんよな!ネットがないから配信もないわけで。
ちくげ なので、CD買って聴くか、ライブ行くかっていう感じですよね。
森脇 そうそう。凄まじかったよな。
ちくげ いい時代ですよね(笑)
森脇 チャットなんて、CD作って、手売りで3000枚とか完売したんちゃうかな。
「売れない」現代
──ほんとに、なんにも売れないです(笑)
森脇 しゃあないよなぁ〜。これだけ便利になったら。
ちくげ ほんとに難しいですね。
──自分が買わないくせに売るのか、っていう葛藤もあったり。
森脇 そうなんよな!おれももう全部配信で聴いてしまうもんな。
全部聴けるだろ。itunesとSpotifyとか二つくらいとyoutubeがあったら。
それでCD買え!って無茶な話よな〜!
ちくげ そうですよね。
森脇 だからやっぱりスタジオもコスト削減して、単価も下がっていくし。
昔だったら1日10万〜15万してたのが今や2分の1以下になって。そうなると設備投資に使えるお金もどんどん減っていくわけよ。
ちくげ はい。
森脇 スタジオの単価がどんどん下がっていくと機材が買えなくなるんよな。
失礼ながら中国の量産された安いマイク・・、まぁそれも値段考えたらいいんやけど・・・日本やドイツの職人がハンドメイドで何週間もかけて作ったやつを一緒にしたらやっぱり酷な話で。
街の写真屋さんに行ったのにスマホで撮影されるみたいな(笑)
そういう状況を危惧してしまうなぁ。今後のレコーディング業界は。実際、東京大阪の大きいところがどんどん潰れていっきょるし。
ただほんま、職人さんが作ってくれたマイクや機材っていうのはほんまに違うから、ぜひそういう一流の機材で録音してほしいわけよ。
レコーディングなんてせっかくの、人生で数回あるかどうかっていう機会やし、それをなんかようわからん機材でやってしまうよりは・・・ちゃんとしたもので・・・と、それをなんとか維持できればなぁと思ってるんやけどな。
ちくげ 僕らも全然使ったことない機材を使うのが超楽しいですよね。
森脇 儲からん仕事やけどなぁ〜〜(笑)
ま〜でも、バンドが減ってるもんな、最近は。少ないよな〜。全国的に。
ちくげ はい。で、僕らもまぁ「バンド・・・なのか?」みたいな。
森脇 そうやな(笑)
なんだろう、音楽する人自体が減ってるんだろか?まぁ、人口自体が減って、若い人も減ってはいるけど。
ちくげ う〜ん。なんですかね、この・・・
森脇 でも魅力があればやるわけやろ?
ちくげ 一定数はいてもいいと思いますよね。
森脇 スマホでゲームしよる人口は増えよるわけで。若い人には音楽は魅力を感じられんっていうことなんだろか。
ちくげ なんで皆、音楽したくならないんだろう?・・・したい人は実はおるんですかね?
森脇 おるんかな・・・
ちくげ したくてもやり方がわからない、みたいな。
森脇 いやでもこれだけyoutubeがあって、やり方なんてスマホでパパッと調べればできると思うんやけど。
ちくげ なんか、昔だったら自分でライブ見て「あ、この人たちかっこいいなぁ」と思って、やってみようかなっていう、リアルタイムで触れてる感じはあったのかもしれないですね。今はリアルタイム感ってちょっと減ってて、パッと何かをやりたいな、と思ってもそれを実行するまでの熱量を持っていけない、みたいなのはあるかもしれないと思います。「そっちはそっちの世界」みたいな。
森脇 あぁ〜、なるほど。
これからの「レコーディングスタジオ」って
森脇 そうそう、最近考えてたのがここで、「ミュージックステーション」じゃないけど、リアルタイムで配信で、セット組んでライブしたら、「あ〜徳島でもこんなんできるんじゃ〜」って。
ちくげ それ面白いですね。
森脇 カメラも結構あるし、ミキサーも配信用のを入手したし、音はPro Toolsでできるしな。面白いかなぁと思って。・・・出るだろ?(笑)
ちくげ 出ます(笑)
絶対出ます。ライブ生配信。
森脇 もう「あかんなあかんな〜」「減っていくな〜」って言うてるだけでは、スタジオもなくなっていくだろうし、ライブハウスもどんどんなくなっていくし。
やっぱり、徳島県でもどっかにはいいマイクが一本ないと、いざ何かいい音で残さなあかんってなった時に、後世に残っていかんけんな。
ちくげ はい。
森脇 あがいていかなあかんのかな。
──コンテンツを作っていくしかない、と。
森脇 やっぱりそこに行き着くんちゃうかな。コンテンツがないから魅力を感じないわけで。
結局、若い人も、もちろんお年寄りでも、いろんな人がいて刺激しあわんと発展がないよな。
やる人が増えたら、音源つくりたいな、レコーディングしてみよかとなったらうちに来てもらって、そしたらまた新しいマイクが買える、と!(笑)
ちくげ コンプレッサーも買える、と(笑)
一同(笑)
森脇 で、またその次に来るお客さんはいい機材で録音できるわけで、どんどん良い音で作品が作れるようになっていく。逆に人が減っていったらどんどん機材を売っていかなあかんけんな!
そういう流れに落ち着かんようにせんといかんな、と思うなぁ。
──ミュージシャン側も、ただ音源をつくるだけじゃダメなのかもしれないですね。人とつながるチャンネルを増やしていかないと。
森脇 今はもう、音源なんてあって当たり前で、youtubeでも配信でもあるわけで。そこをどうやってPV伸ばすかっていうことになって来た時に、何か違うこともやって引っ張ってこんとあかんのかもな。そしたら最終的には、音楽のアピールになるぞ、っていうことよね。
ちくげ 全員がある程度の良い音で録れちゃう時代ですもんね。
森脇 そうそう。どないでもなるから。
ちくげ 音質では勝負にならないですよね。
森脇 裾野を広げて、いろんなターゲット層にリーチしていかんといかんのかな。
──企業の戦略会議みたいになって来ましたね。
ちくげ そうなって来ると僕は、疎いんですが(笑)
森脇 でもまぁ、自分が好きなことをやらんと、人に伝わらんわけで、嫌なことやってもしゃあないしなぁ。かと言って、おれが釣り好きやけんってyoutubeで釣り番組やったとして、そこからどうやってレコーディングスタジオに人を引っ張って来るん(笑)
ちくげ あはは(笑)
──いや、それ全然あると思いますけどね。
森脇 レコーディングスタジオのエンジニアがやる釣り番組・・・。
あれか、超高音質で魚の跳ねる音とか、水音とか録音して配信か。
ちくげ それいいじゃないですか。
森脇 ああ、それを見て「すごいな。こんないい音で録れるんか!」と、なったり。
ちくげ そういうフリー音源とかもいいですよね。
森脇 いやもうおれ釣り行ったら楽しみたいけんそんなんする暇ないって!
一同(笑)
ちくげ 別に釣り限定じゃなくていいっすよ(笑)
今回新しくレコーディングしてる曲の一つに「砂利」の音を入れてるんですよ。あれは自分達で録音したんですけど、そういうフリー音源が、いいのがあったらいいなぁとは思いますよね。
森脇 あ〜、なんか嘘っぽいだろ?ネットに転がっとるフリー音源って。
ちくげ そうなんですよ。
森脇 でもその域までいったらもう「音効技師」の仕事になるかなぁ。専門職。あの人らはあの人らで高い機材使って作っとるわけで、それをフリーでポンポン出すってわけにはいかんよなぁ。
ちくげ なるほど、まぁフリーじゃなくてもいいですけどね。
森脇 うーん。できる範囲で・・・。まぁ音は録れるとして・・・やっぱり「発想」よな。砂の音にしても、実際は砂じゃなかったりするわけで。
──もしくは、同じギターとアンプで、スタジオトリゴロならこれだけのマイクの選択肢で録れますよ、とかはどうですか?
森脇 あぁ〜〜なるほど。
ちくげ 確かに、ホームページを見た時に、実際にこんな風にいろんな音が録れますよっていうのは聴けたらいいですよね。
森脇 そうか、マイクの特性かぁ。ギターならこれこれ、声ならこれこれ、と。
ちくげ そうですね。
森脇 声なんて、びっくりすると思うわ。マイクでこんなに違うんか!って。
ちくげ はい。そういうのをもうちょっと身近に感じれたらいいですよね。
森脇 じゃあ、やってもらおか。
ちくげ あ、僕の声でですか?(笑)
森脇 うん(笑)男声と女声の男声の方を。
ちくげ まぁ、はい(笑)
森脇 新しいマイクも買ったからな。早く試したいんよ。
ちくげ ぜひ、近日中に試させてください。
──タッグですね。いろいろフィーチャリングしていくのは面白いですよね。
森脇 やっぱり協力してやらんとな。
ちくげ あ、こないだ言ってた例の企画・・・・
───ここから先はまだお見せできない、新しい企画のお話が延々と───
森脇 なんか、企画会議みたいになってしまったな。
うまいこと編集しといてよ(笑)
──これはこれで面白いと思いますよ(笑) ちくげさんなにか質問などあれば。
森脇 音作りで困ってることとか。
ちくげ いやぁ、何がわからないのかがわからない状態でですね・・・
ほんまはね、実際にPro Toolsいじりながら話したかったんですけどね。
──文字にできないですからね(笑)
ちくげ もうほんとに、音の追求欲が止まらなくて、全部知りたい、みたいな。
森脇 なるほど・・・。よっしゃほな一個だけ、技を教えてあげよう。
ちくげ 何ですか!?
そのまま二人はMacに向かって何やら難しい話を続けておりました。
これでも使えない話はバッサリ切りまくったんですが・・・二人の音への探究心は止まらず、随分長い対談となりました。
森脇さん、スタジオトリゴロの皆さん、長時間お付き合いいただきましてありがとうございました。 今後ともよろしくお願いいたします!
森脇大佑さん
スタジオトリゴロのオーナー兼レコーディングエンジニア。
チャットモンチーのみならず錚々たるミュージシャンのレコーディングに携わるなど、長年徳島のミュージックシーンを支えてきた。
GEEK! GEEK! GEEK!やbandneonも長年お世話になってきた、頼れる兄貴的存在。